Redundanz

僕の言葉は、人と話をするためにあるんじゃない。

小噺

Intermission

「君の負けだ」老人は言った。 「無意味の意味が定義されてしまった。矛盾の用法が整備された。真理への道は閉ざされたのだ。それでも君は進もうっていうのかい?」 少女は答える。 「ええ、これはそういうお話だもの」

0915

私が「ねこは英語でcatというんだ」と彼に教えると、彼はしばらくの沈黙の後「なるほど!」と叫んだ。 「確かにその通りですね、今まで気付きませんでしたが、よくよく考えてみるとねこが英語でcatなのは、非常に自然なことのように思えます。」 理解症候群(…

Uのこと

大学のベンチに腰掛けて、目の前にそびえるクスノキのひび割れた樹皮を眺めながら物思いにふけっていると、隣に誰かの座る気配があった。横目で確認するとUだった。目が合う。彼女の黒く静謐な瞳が僕を覗きこむ。宇宙みたいだ、と僕は思った。背景放射は3ケ…

天才少女の話

少女には苦手なものがたくさんありました。友だちをつくるのが下手だったし、小学校の勉強もからきしでした。周りの子供達が夢中になっているテレビ番組や音楽、ゲームのことがちっともわからないから彼らの仲間に加わることが出来ないし、仕方なく時間を潰…

南北線のホームドアの話

昼ごろ渋谷で友人と会う予定があったので、僕は南北線の電車に乗って永田町駅に向かっていた。日曜のこの時間の電車だとたいていそこまで混んでいなくて、席に座ることができる。人と密着するのがそんなに好きではないから、このくらいの混み具合だとかえっ…

社会と自由の話

社会的自由ってなんだろうね。他者に干渉されないことかしら。干渉。では干渉ってなんだろう。意志決定に自分以外のものが関わること。でも、意志決定に自分以外のものが関わらないことなんて原理的にありえない、はず。あらゆる判断は、何かしらの対象なし…

たぶん続かない話

お話をしようと思う。僕が経験したとても奇妙な物語、あるいは、僕がこれから考えるありきたりな物語。両者に大した違いはない。思い出すことと思いつくことの間にあるものは、そういう過去があったかどうかという程度の差異でしかないのだ。その過去を知っ…

見えないものが見える話

普通の人に見えないものが見えるってことはさ、普通の人に見えてるものが見えないってことだよね。例えば、幽霊が見える人には、幽霊の背後にある景色は見えない。それって結構、危ないことじゃないかな。 透けてるんだよ。 まあ、幽霊はそうかもしれないね…

ことばねこの日常

自宅の最寄り駅に電車が到着し扉が開くと、冷たい風が吹き込んできて、僕はぶるると身を震わせた。同じ電車に乗っていた冬風寒いねこ氏も、コートを自分に引き寄せるようにして言う。 「冬の風は寒いですな」 「ええ、寒いですね」 冬風寒いねこ氏は三角形の…

色の話

縦縞は赤で、横縞は青、それから、ドット柄が緑。私の色覚は、可視光を波長によってこのように表現する。もちろん混色だって表現でき、例えば格子柄は紫であり、それにドットが加われば灰色となる。それがより密になると黒くなり、何もなければ白色だ。私に…

セミの話

2^57885161-1年ゼミは、素数ゼミ(メルセンヌ素数ゼミ)の一種である。これまで発見されたものの中で、もっとも幼虫期の長いセミとして知られている。そのライフスパンの長さから、定常宇宙説が再び脚光を浴びる原因となった。最近では天然のメルセンヌ・ツイ…

無意識彼女

彼女をつくったのは、去年の夏の、とある朝の事だった。大学への道のりを急ぎながら、僕は自分の言葉について考えていた。僕の言葉は、本当に僕のものだろうか、と。幾度となく考えられてきた議題であり、新鮮さなどなく、諦観のもとに強引に畳まれることが…

独我論と自由意志その2

タブレットの指し示す室の扉に僕のアイデントタグをかざすと、一瞬の間があって、それからドアがスライドして開く。どうぞ、という大人のものとも子供のものともつかぬ澄んだ声が室の奥から響き、そちらに目をやると、研究室らしい雑多な部屋の中で、一人の…

独我論と自由意志

どうやら、僕の脳はTABRISを受け付けないらしい。それが、僕を診察した医師の出した暫定的な診断結果だった。TABRIS。なんの略称か僕は知らないけども、そのまま読み下してタブリス、自由意志を司る天使の名前となる。略称を意図して付けられた正式名称の気…

愛のスコール 言葉味

雨が降っている。今日は少々肌寒く、昨夜、風呂あがりに飲む冷たい炭酸ジュース概念の誘惑に負けて買ったライチ味のスコールが、冷たい。美味しいけれども。 そういえばスコールって僕の生まれ故郷の街が原産だったな。と思い出す。パッケージの文字列を確認…

五角形の話

私は五角形である。5つの頂点と辺を持つ多角形の総称だ。書いたことのある人も多いと思う。見たことのない人はほとんど皆無であろう。図形界ではちょっとした有名形だと自負している。 ところで、私があなた方の前に姿を表わすのはこれが初めてである。物理…

りんごを落としてみること

あなたの目の前に林檎の木がある。その枝先には熟れた林檎がなっており、時折風に吹かれて、今にも落下しそうに揺らめいている。林檎の重みは近い将来、ヘタを切断し、自らを木の支配から解き放つだろう。それがどの瞬間に生じる出来事なのか予測しろと言わ…

Nyan-Nyaki!

今日は眠い日でした。(ちゃんちゃん) 即興小説トレーニングというwebサイトで小説書いて遊んでいたら、これ以上文章を書く気力がなくなったので、今日はそれを貼り付けて終わり。 http://webken.info/live_writing/novel.php?id=16326 お題:ダイナミックな…

THE END

我こそが本当の意識を持つ唯一のものだと手に武器を取り互いに滅多打ちに殺しあう人間たちだったが、ある一人の押したスイッチをはじまりに核戦争を勃発させあっという間に滅亡する。 人類の存在しなくなった宇宙では、物陰で怯えていた意識がおずおずと顔を…