Redundanz

僕の言葉は、人と話をするためにあるんじゃない。

0915(インド11日目)

 今朝は3時に目が覚めてしまいました。眠れないから、5時までぼーっとして過ごします。日増しにぼーっとするスキルが上がっている気がする。体感時間をゆったりにして、退屈を受け流す能力。何か考え事をしても良いのだけど、蒸し暑くて気分が乗らないのです。
 日の出の時間になったので、また川岸に降りてボートに乗ります。例の三人組も来る予定だったのだけど、彼らは都合が悪かったのか一緒には乗りませんでした。まあ彼らの友人は未だに呻いているようだし、今日には日本に帰るらしいから、忙しかったのでしょう。沐浴はしてたみたいだけども。彼等とあまり話せなかったのは残念ですが、連絡先は聞いたし日本で会えば良いか。
 それで、またナンダ氏と2人でガンジス川上を漂いながら、船を操る二人の男の人(彼らの身体は上半身が屈強なのに対し足は細くって、ずっと船を漕いで生きてきたのだろうことが想像されます)解説を聞いたりしつつ日の出を眺めました。少し雲が出ていて太陽が隠れがちだったのだけど、なかなか幻想的でよかった。有史以来何万回とこの光景は繰り返されてきたのだろうな、とか。僕らの思惑なんて無視するようにガンガーの水は流れています。はあ。
 風邪気味だったので沐浴はやめにして、ホテルに帰って朝食。10時半の電車だったのですが、バラナシの道は混んでいて何が起こるかわからないからとホテルのおじさんに言われて、九時過ぎにはホテルを出ました。このおじさん、かなり気のいい人で一緒にいて楽しかったから、別れるのは少し惜しかった。まあ次バラナシに来ることがあれば、またこのホテルを訪ねてみようと思います。あと、次こそは沐浴を。
 駅にやって来て毎回困るのが、電車のホームを探すのに手間取ることです。電光掲示板には限られた列車の状況しか出ていないし、アナウンスはうまく聞き取れない。それで毎回人に聞くはめになるのですが、人に聞くとすぐに教えてもらえるので、多分チケットに書いてあるか、電車の行き先によってホームが決まっていたりするのでしょう。今回もその辺の乗客をつかまえて尋ねると快く教えてもらえました。
 さて、あとは電車を待つだけなのですが、その電車がなかなかやって来ません。ホームの電光掲示板の表示を見ると、4時間遅れだとか5時間遅れだとか恐ろしい表示が並んでいます。そもそも遅れを表示する専用のパネルがあるというのが、日本生まれ日本育ちの僕には理解しがたい。インドは駅と駅の間隔が長いから、遅れを取り戻すのが難しかったり、ひとつの車両の遅れが他の電車に大きく影響を与えたりするのだろうけど、それでもどうやったらそんなに遅れられるのか見当もつきません。というか定刻の方が楽観的すぎる気がする。予想されるアクシデントは織り込んでおけよ。
 僕の乗る電車は2時間の遅れだとのことなので、ホームにあった小さな軽食屋に入り、またあまり美味しくないハンバーガーを食べながら待ちました。インドの一般的なハンバーガーには、肉の代わりに野菜をこねて肉っぽくしたものが挟まれています。ヒンドゥーでは牛は聖なる生き物だし、イスラムでは豚が不浄な生き物とされているから、鶏肉以外の肉はあまり出てこないのです。(しかし聖なる生き物だから牛を食べてはいけないって理屈、よく考えるとよくわからない気もする) 日本から豆腐ハンバーグとか輸出したら流行るんじゃないかしら。
 その軽食屋で出会ったインドのフランス大使館の人たち(彼等もブッダガヤへ行くところらしい)と少し話をしたりして待ち続けるのですが、それでもいっこうに電車はやって来ません。睡眠不足で身体はだるいし、ホームは蒸し暑いしで発狂一歩手前というところになってようやく電車が、しかも隣のホームにやって来ました。車内は冷房が効いていて涼しく、僕は科学の神に感謝しながらしばらく眠りました。ふう。
 ガヤ駅に到着すると、あたりはすっかり暗くなっていました。オートリクシャーをつかまえてブッダガヤへ。バラナシと対照的に道は空いていてあまり建物も見られず、田舎だなあという感じがあります。リクシャーを降りて、さて宿はどうしようと考えているところに、安宿を紹介するなどと言って男が近づいてきたので、胡散臭いけどまあ一泊くらい良いかとついて行くことにしました。その男は、学校で働いている云々と言っていたので、寄付目的かもしれません。絶対僕はしないけどな。
 しばらく歩くと目的のホテルへ。値段の割に設備が良すぎる(単に新しいだけかも)ので、やはり怪しい気がしてきます。スタッフもなんか暗いし。(これはまあ僕が職業的笑顔を見慣れてしまったせいで、本当はむしろこちらに安心感を抱くべきであるようにも思うが) しかし体は疲れているし、風邪の具合も芳しくないので、考えるのは後回しにして眠ることにしました。明日はマハーボディ寺院へゆきましょう。