Redundanz

僕の言葉は、人と話をするためにあるんじゃない。

哲学探究を読む(7)

第8節では第2節の言語が拡張される。追加される語は数詞 a, b, c, …… および「そこへ」「これ」である。また助手には一冊の色彩標本が渡される。など。すると「d―石板―そこへ」や「これ―そこへ」などの文が言えるようになる。 続く第9節では、第8節の言…

哲学探究を読む(6)

いまさらだが1節ずつ読んでいく方式だとその都度意識が寸断され議論の全体像を追いづらくなってしまう。この辺で一度流れを整理しておくことにする。 まずアウグスティヌス的な言語観が提示される。この言語観においては、言語とは意思疎通の一つのシステム…

哲学探究を読む(5)

ここ数日の間に決めねばらならないことがいくつかあり、その決断に精神のリソースを消費してしまっていた。だいぶ時間があいてしまったが、第6節。 言語獲得以前の子供は、言葉を理解しないので、言葉による説明を介して言葉を学ぶということはもちろんでき…

哲学探究を読む(4)

昨日よりは元気になったとはいえ、頭の働きが鈍っている。思考がなかなか形を成さない。こういうときは、意識的に一度頭を真空状態にしてしまうのがよいことを知っている。気圧差に導かれて、空っぽになった頭の中にぽつぽつと考えがわいてくる。これをゆっ…

哲学探究を読む(3)

どうも今日は一日中体調が悪かった。全身の神経がひりついている感じ。それはさておき第3節。 前節では、一つの小さな言語が提示され、これを「完全で原初的な言語」と考えてみよう、という提言で終わっていた。だが、ここで注意しておかねばならないことが…

哲学探究を読む(2)

早起き――といっても8時起床だけれど――に成功した。残念ながらすがすがしい目覚めとはいかなかったけれども。 というわけで第2節。 意味という、かの哲学的な概念は、言語の働きかたに関する一つの原初的な観念のうちに安住している。しかし、それはわれわ…

哲学探究を読む(1)

最近めっきり衰えてしまった読書筋を鍛えなおすために、『哲学探究』を再読して読書記録を書いていくことにした。読書筋とは書いてあることを書いてあるままに読もうとするさいに使われる筋肉のことである。これが衰えるとどうなるかというと、何を読んでも…

0809

ある人間の生が幸福なものであるかどうかは、彼がどのような世界観に生きているかに依存する。他人から見れば不幸である人が、当人の世界観において幸福であることはありうる。ここで世界観とは、その人が世界をどのように構造化し、その要素にどのような感…

0719

退屈を友とせよ。 駅のホームでカラスがなにか丸いものをくわえているのを見た。よく見るとそれは小型の鳥の卵のようで、どこぞの誰かの巣からかっさらってきたのだろう。じっと眺めていると、カラスはそれを柱の根本に立てかけて固定し、それから嘴で器用に…

0711

いろいろなことをすぐに忘れてしまう。忘却の荒波は概念の伽藍を削り取っていく。しかしその浸食作用に耐えることのできた構造は、強固であるばかりか、その浸食プロセス自体を我がものとし、自身を洗練させていく。それはどこまでも宇宙的な営みだ。美しく…

0707

昨日書いた話をいま一度整理しておく。f(x)=2x+3 と関数を定義する際の x は、 f が引数に対しどのような操作を加えるかを示すための仮の存在であって、それゆえ x を用いて関数定義を行ったからといって f が x の関数であるということにはならない。したが…

0706

数式の構文論?について考えていた。f(x)=2x+3 という関数定義をプログラミング言語的に捉えると、 x は argument ぽく見える。とすると、この x は f の定義の外側では意味を持たないはずで、それならたとえば「関数 f を x で微分する」という表現はナンセ…

0701

人はときに歴史の IF を考える。第二次世界大戦で枢軸国が勝利していたら、とか。こうした可能性検討の妥当性は、予測に用いた世界のモデルがいかであったかに依存している。裏を返せば、予測モデルを評価するために IF を考えることには意味がない、換言す…

0621

箱の中にボールを2つ、続いて3つ入れる。箱の中のボールの数は5つになっているはずだが、実は箱の底に穴が開いていてボールが1つこぼれているかもしれないし、あるいは自分の知らない間に誰かが1つ加えているかもしれない。箱の中のボールが実際には何…

0606

僕はラムレーズン味のアイスが好きだが、残念なことにアイスは食べるとなくなってしまう。これは経験的な事実だが、しかし一方で、アイスは食べるとなくならなければならない、ということが宇宙的に決まっている(つまり真理である)わけではない。アイスは…

0605

幸福に生きるということは、その世界観に生きることが幸福であるような世界観に生きることである。 ニューラルネットワークをただの経験を蓄積する箱と考えるのはもったいない。DNN と SGD の組み合わせには、広大な探索空間の中から(「人間にとって」とい…

Jの系譜

最近フランス系思想家の本に縁がある。アルベール・カミュ、ジャック・ランシエール、ジャン・ティロールなど。これらの名前を見比べていてふと気づいたのだが、フランス人思想家のファーストネームはJから始まることが多い。卒論執筆時に散々お世話になっ…

0523

ランシエール『民主主義への憎悪』を読んでいる。フランス人思想家特有(標本数3くらい?)のレトリカルな言葉遣いがやや読みづらいが、刺激的な議論に満ちたたいへん面白い本である。そこで整理されている様々の概念を頭に入れたうえで現代社会を眺めなお…

0506

『ペスト』を読み終えました。本当によい小説で、感想など書く気になれない。せっかくなのでこの機会にもっと読まれるとよいと思う。 人は神によらずして聖者になりうるか。これはジャン・タルーの問いかけだが、僕は不可能であると思う。僕らは生活のためと…

0503

ニューヨークで行われた抗体検査によれば、ニューヨーク市民のうちの 25% ( 200 万人くらい)はすでに covid-19 の抗体を持っているようで、死者数 13000 人ほどなので、単純計算で 0.5%~ くらい死ぬことになる。ヨーロッパ各国における例年の死亡統計との…

0429

文章を書くとき、絵を描くとき、楽器を弾くとき、深く思索しようと試みるとき、僕はどうも必要以上に意気込んでしまって身体をかちこちに強張らせてしまう。だが精神を研ぎ澄ますためには、余計な一切の力は抜かなくちゃいけない。それがなかなかできなくて…

0414

深夜の静寂の中で書き物をしていると、ふと冷蔵庫のかすかな作動音が聞こえてくる。しばらく耳を傾けているとそれは止まり、また静けさが戻ってくる。液晶に意識を戻して続きを書きはじめる。そういうドット絵 GIF アニメみたいな繰り返しの時間を僕は愛して…

0413

今日は久しぶりにかなり集中して仕事(といっても半分遊びみたいなものだが)をした。しばらく前に個人的に興味深く思われるアイディアを実現した Deep Learning の論文が出ていたので、その再現実装。微分可能なレンダリングを介して三次元空間のニューラル…

0411

カミュ『ペスト』を読みはじめました。 在宅労働になって二週間が経った。はじめのうちは仕事とそれ以外との境目が曖昧になりがちで心身のバランスをやや崩してしまっていたが、ようやく慣れたのか調子も戻ってきた。自分は自宅で仕事したほうが性能を出せる…

0405

カードキャプターさくらで、主人公のさくらがローラースケートで通学しているのは、自転車通学している雪兎さんの速度についていくためなのだ(だって通学以外でローラースケート使っていないでしょう)、という主張を聞いて、なんといえばいいのかな、「人…

0401

作業に没頭するあまりPCの画面に前のめりになるみたく、意識が視界や感覚に対し前のめっているような感覚に陥ることがある。反省の奥行きが失われ即時的に外界に応答するようになる。あまり好きな状態じゃない。水底から空を見上げてるくらいが僕にはちょう…

0326

自分の世界観を織りなす中核的洞察を表現するなら、「認識とはシンボル化することである」「シンボルはただシンボルとのみ関わる」「世界には自己シンボル化の機能があり、われわれはその果てにいる」あたりになるだろうか(とくに2個目が重要!)。これら…

0321

高校の友人の結婚式に参加した。よい式だったと思う。高校時代の僕にはそれがよく理解できていなかったが、新郎であるところの友人はたいへん人間ができていて、これからも彼は周囲との調和を保ちつつまっすぐ自分の道を歩いてゆくのだろうと感じた。彼の人…

0317

この身体に何年も生きてきて、どんな動きも自在にこなせる気でいるが、たとえばピアノの前に座ってみれば、簡単な曲すらこの手では奏でられないことに気づく。脳みそだって同じだろう。僕は汎用知性なんかではない。弾けない曲は大量にあり、普段はそのこと…

0316

資本主義の道徳法則があるとしたら、それは「自分がよいと思えないモノでお金を稼いではいけない」あたりになるのではないか、と思った。データドリブンなマーケティングは正直言って非倫理的だと感じる。人間の認知をハックしてはいけない。