Redundanz

僕の言葉は、人と話をするためにあるんじゃない。

0702

 粘土細工。僕にとっての考えることのイメージ。はじめに用意した一定量の粘土塊、その分量が概ね現実に即していて、そしてそれを連続的に変形させることによって目的のものをつくることができるなら、現実においてもその思考は実現可能である。ただしそうしてつくることのできる形が実現可能なものすべてかというとそうではなく、そういう形をつくるにはいくつかの場面で非連続的な変形が、言語的な飛躍が必要になる。乾いた粘土を切って削って、接着剤で貼り合わせる工程。最近それにちょっと慣れてきた気がする。

 一滴の雨粒が紫陽花の葉を揺らす。水滴によってクチクラ層に与えられた衝撃は、葉の弾性に乗り移り植物の全体へと広がってゆく。膨大な数の細胞が揺さぶられる。水滴はアイデンティティを喪失して崩壊し、飛び散る無数の断片は張力によってかつての球面を取り戻そうとする。雨粒だった断片たちは、おのおの紫陽花やその他まわりの光線を歪曲させているが、そこに結ばれた像を見る者などいるはずがない。目眩。一瞬の歴史はすぐさま次の雨滴によって塗りつぶされる。