Redundanz

僕の言葉は、人と話をするためにあるんじゃない。

0209

 語られたことはすべて規範的である。なぜなら、その内容を肯定するにせよ否定するにせよ、ある文を理解するということは、その文が真となるような条件を理解することであり、それはとりもなおさず、それらの条件が「見えている」ことを要請するからだ。たとえば「緋色と紅色は別の色だ」という文を理解しようとするとき、われわれはすでに「緋色」と「紅色」という色の存在――すなわちある特定の境界線の実在――を前提させられてしまっている。そして知らぬ間に前提させられてしまったそれらの前提が、われわれの世界をそのように教育していくのである。

 語られに規範性を与えるのは、「言葉には意味がある」というわれわれの態度である。