Redundanz

僕の言葉は、人と話をするためにあるんじゃない。

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 価値概念の中心にあるのは有限性とその所有だと思うのだけれど、コンピュータというのはそれと真っ向から対立するデバイスである。いちど情報化されたものはいくらでもコピーし転送できるわけだから。だから価値という概念を情報社会の中で維持するためには、そもそもコンピュータで扱えないものを使って価値を生み出すか、なんらかの仕方でコンピュータの能力を制限するほかない。で、コンピュータの能力を制限する方法としてはまず暗号化があるわけだが、暗号化には誰か鍵をかける人が必要であり、ここに(鍵を知っている人と知らない人という)立場の非対称性が生まれる。このような仕方でコンピュータを制限したところで、既存の価値を守ることは出来ても、それ自体が新しい価値になるようなことはない。それでは価値の問題から信用の問題に転じてしまう。ではこうした非対称性のない、つまり特権的立場を必要としない制限の仕方はあるのかというと、たとえばBitcoinなどで使われているブロックチェーンがそうである。ブロックチェーンは本質的には、各コンピュータを競争させることによってコンピュータの能力を制限する仕組みなのだ。と僕は解釈している。ただし僕にはそれが巷で騒がれているほどに良い仕組みだとは思えない。やはり目的を達するにあたって犠牲にしているものが大きすぎると感じるのである。ここでより簡単な方法で、立場の非対称をつくることなくコンピュータの能力を制限できれば、それこそすごいことが出来ると思うのだけれど、僕の小さい脳みそではちょっと思いつかない。原理的に不可能なのかもわからない。誰か思いついたら教えてください。