Redundanz

僕の言葉は、人と話をするためにあるんじゃない。

2023-01-01から1年間の記事一覧

哲学探究を読む(28)

第51節。これまでの議論は『テアイテトス』の言語観を論駁するためのものだった。『テアイテトス』の言語観とは、世界には「原要素」が存在し、それが名指されることで、対象と記号の、すなわち世界と言語の結び付きが作られているという言語観である。人…

哲学探究を読む(27)

第50節。原要素についての議論の続き。 それでは、要素については、存在するとも存在しないとも言えない、と言うのはどういうことのなのか? この問いがそもそもどこから出てきたのかというと、第46節の『テアイテトス』の引用である。「それ以外の規定…

哲学探究を読む(26)

また前回から日にちが開いてしまった。誰に対しての言い訳かわからないが――というか言い訳とは本質的に自分に対してするものである――書いておくと、去年から職場(現時点基準だと前職)の人たちと『青色本』読書会をしていて、それがまだ続いている。正確に…

転職

5月いっぱいで現職を退職し、6月から東大のとある研究室で労働することになりました。役職はリサーチエンジニア、ということになっている。現職には、アルバイト時代も含めれば、かれこれ7年以上勤めていたことになる。長いこと居座ったものだ。よけいな…

自分のこと

三十歳になって自分という人間について考えることが増えた。昔は、自分という人間をただの《私》の乗り物くらいにしか思っていなかった。とまで言うと言い過ぎかもしれないけれども、この宇宙に一点だけの超越という側面が前に出すぎていて、自分の他の性質…

つまらない箱庭のこと

村上春樹『ノルウェイの森』をぱらぱらと読み返していた。永沢がワタナベ(と自分自身)を評して「自分が何を考え、自分が何を感じ、自分がどう行動するか、そういうことにしか興味が持てないんだよ」と言っていて、それが妙に印象に残っている。ありきたり…

0110

この世に生を受けた人間がまずはじめにやらねばならないことは、世界に合わせて自分の形を整えることである。自然法則から服の好みに至るまで、世界は既存の区画線に満ちている。その区画線に、自己の内の区画線を一致させること、それができて初めて、人は…