Redundanz

僕の言葉は、人と話をするためにあるんじゃない。

0208

 回転式に生活をやっているとふと旅に出たくなる。ここではないどこかの絶景を思い浮かべて、それを前に立ち尽くすことができたらどんなにいいだろうと考える。だがそうした瞬間に僕の頭を占めているのは、(インターネットや駅のポスターなんかで見て記憶に残っている)四角いフレームで切り取られた魅力的な旅先の「カット」であって、実際にそこに居る自分が知覚するはずのものでは必ずしもない。旅行パンフレットにプリントされた光景が美しいのは、それが視聴者の視線を強制するからであって、フレームの外側に目を向ければ、案外みみっちい人類の営みが広がっていたりする。観光客の人混みとか自動車の騒音とかね。だから結局、物足りない気持ちになるんだろうなと予想はするわけだけれど、それでもやはり、ここではないどこかに期待する気持ちがある。広い世界のどこかには僕にとって完璧な風景というものが存在しているのではないか。いつか探しに行きたいものである、とか。そんなことを考えていたら一日が終わってしまった。まあそれはそれでいいんだ。