Redundanz

僕の言葉は、人と話をするためにあるんじゃない。

習作 20210814

おのれの内の生活の獣が寝静まる夜
冷蔵庫のコンプレッサーがにわかにうなり
おれはしわくちゃの手紙をていねいに引き伸ばす
この文面に意味があったとき、自分はどんな形をしていただろう?

かつてと変わらぬ姿のままで色褪せてしまった言葉たちに
もはや再生の道は残されていない
感受性の痕跡はいずれ新鮮な化石となって
夏休みの子どもらを歓ばせるだろう
子どもたちの中にはおれの父と母もいて
あどけない表情でラテン語の学名を見つめている

忘却の縁をおれは歩き続ける、審判の日のために
大地のほころびを感傷的になぞりながら、らせんを描いて
背負った十字架は超立方体の展開に見えないこともない
あの化石で出来ているに違いないそれは
おれを殺すためのものではない

ついに時間が裁かれるとき、贖われるのは罪の罪である
人類は自由なる濡れ衣を晴らし、おれの血は一滴残らず数列に変わる
だが、まだそのときではない
過去の総和がおれの近似であるうちは